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「諸々の愚者に近づくことなかれ」とは言うけれど・・・(上)   

夜ごと、眠れなくなって久しい。
孫のトーマウンの寝息、歯ぎしり、夜回りたちが鉄のドラを打つ音、向かいの家の乳児の泣き声、お寺の木製の鐘の音、一番鶏の時を告げる音などに耳を澄ませながら、ワインばあさんの思考の糸は、あちらにいったり、こちらにいったりと、風の吹くままに漂っていた。

昨日の夜は、トーマウンが「ばあちゃん、今晩は"バリヤン"飲んで寝てごらんよ」と言って、白い錠剤を一錠くれた。



すると、娘のピョンウェイが夢の中に出て来た。
彼女はワイン自ら着せてやった黄色のジョーゼットのエンジー(注:上着)を着ていた。

「おまえ、どこから来た言うんだえ」
「あら、かあさんたら、わたしをお墓まで送ってくれたのは、かあさんじゃないの。お墓から来たに決まっているでしょ」

娘が死んでしまったという事をいま初めて思い出したワインは、もつれるように寝床から起き上がって、娘の手を取った。
しかし空をつかむかのように、なにも手に触れない。

「わたしの息子は?元気かしら、かあさん」
「あの子は、わたしがちゃんと育てているよ。小さいうちから勉強もよくできる。高校卒業試験だって一発で合格した。そのあと仕事をしながら通信教育で勉強を続けて、学士の資格も手にしたさ。あっちを見てごらん、トーウマンの学士姿の卒業写真、立派なものじゃないか」
顔を花のようにほころばせて、「あの子は、父親に似ているわね」と娘。

突如怒りに突き上げられ、「ピョンウェイや、おまえはあいつのことを、まだふっきれていないのかい」ときつい口調で言ったところで、ワインは目が覚めた。



夢と悟ったとき、ワインは息切れとめまいを覚えた。
壁に掛けてある写真をじっと見ているうちに、写真がわずかながら動いた気がした。
風のためか、ヤモリがぶつかったためなのか。

「ピョンウェイったら、あのバカ娘が。あれが連れ添った人間もバカ。あの娘もバカ者さ。だからこそ、あんな愚かな芝居は早々に幕が降りたんだ」



ワインは、文盲だった。
「あ」を籠ほど大きく書いてみせたとしても、何も判らなかった。
しかし、他人の学問に対しては敬意を払った。
学問は貴いものだと思っていた。

幼いころは、ただただ勉強したかった。
文字が読めるようになれば、お金持ちになれると心から信じていた。
しかし、勉学の機会は与えられなかったのだ。

母親にせがむと、「ようっく、考えな。学校に通うってことが簡単なことだと思うかえ。無料っていったって、月謝を払わなくていいだけのこと。本だとか、鉛筆だとか、いったい誰に買ってもらうってんだい。文字が書けなくったって、読めなくったって、それがどうだってんだ」と言うのだった。

「わたしは文字が読めないけれど、結婚するなら学問のある人にしよう」
ワインはそんなふうに決心していた。



そして、ワインは、後に夫となるキンマウン先生に巡り合った。
40も過ぎたやもめではあったが、彼には先妻の子どももおらず、家族関係にも問題がなかった。
学校の教師といえば、学問に関しては何の心配もない。
子どもができたって、他人の学校に通わせる必要はない。
そんなたった一つの理由だけで、彼が年をくっていることも、風采のあがらぬこともどこかに行ってしまい、首を縦に振って受け入れてしまった。

しかし、ワインは運命の変化というものを計算していなかった。
結婚生活5年目、娘ピョンウェイが4才のときに、夫は高熱を出して急死した。

「なんてこったろう、とうさん。娘はまだ学校にも上がっていないのに、私たちを置いていってしまうの」と、泣くばかりのワインであった。


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『ベランダから外を眺める親子3人』(ヤンゴン)















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『歩くのもまだおぼつかない女の子』(ヤンゴン郊外)

# by kokeko-13 | 2012-05-16 09:53 | ビルマ文学

ケッガレイの耳飾り   

ケッガレイの手の上に、赤い紙箱。
白く柔らかな綿にくるまれて、ダイヤの耳飾りが一対、ケッガレイの目を射ぬかんばかりにきらきらと光を放っていた。

「ケッガレイにつけてもらおうと思って。ぼくのかあさんが、とうさんから結婚の贈り物にもらって、生前ずっと身につけていた遺品なんだ。だから、ぼくらにとっても一番の宝物ってとこかな。金額的にも、ぼくの持ち物の中では一番の価値があるんだ。ケッガレイ」とボーボー。

全身で喜びを表現するケッガレイ。

夕方、ボーボーからこの贈り物をもらったときは、本当に有頂天になってしまった。
そのことを思い出しては、ほのぼのと嬉しさをかみしめていた。
ケッガレイの喜びぶりに、ボーボーも満足し、とても幸せになったのは本当である。

「ほんとにきれいね、ボーボー。これダイヤなの?」
「とうさんがそう言ったんだ、ケッガレイ。ぼく、あまりこういうことわからないもの」
「あなたのおとうさんがおっしゃたなら、そうなんだわ。わたしたちの見たことのあるダイヤって、まったくこんなふうだもの、でしょう」

ケッガレイ自身はダイヤどころか、わずかの金だって身につけたことはなかった。
ケッガレイの人生はこうした高価な装飾品とはあまりに遠く離れていた。

「ふうん、でもね、ボーボー。この耳飾り、あたし、どうやってつけようか。あたし、ピアスの孔をあけていないんだもの」
ケッガレイにとっては大問題だったが、ボーボーはその贈り物をケッガレイが気に入ってくれればこれ以上の満足はないというふうに「もうきみの物だもの。つけられなくても、しまっておいたらいいじゃないか。じゃなかったら孔をあけてつけるんだな。ね、なんでも好きなようにおし」



夜中の12時。
耳飾りのことが気になって眠れないケッガレイ。

「そうよね、結婚する今になって、もっときれいにしたいから孔をあけたなんて、恥ずかしいし。だからといって、彼の贈り物だもの、いつもつけておきたいし。困っちゃう」
丸い鏡を取り上げて、自分の耳を映してみる。
耳飾りをつけたら、さぞ似合うことだろう。

ケッガレイの母親が蚊帳をそっと持ち上げて、「まだ寝ていなかったのかい?」
このとき初めて、ケッガレイは母親のことを思い出し、申し訳なく思った。

「かあさん、光がまぶしくて眠れないんじゃない?」
「ちがうよ、おまえ。ずっと昔から、明かりをつけていてもかあさん、眠れただろう。そうやって、おまえは大学まで出たし、いまじゃ就職しているじゃないの。おまえが明日、仕事があるから言ったのよ」

母一人娘一人なので、ケッガレイたち母娘は一つのふとんに一緒に眠っていた。
声をあげて読みながら勉強した年齢から、一人前に静かに勉強できるようになり、最後には大学を卒業するまで、ケッガレイは寝床のそばで明かりを灯して勉強してきたのである。

「わたし、耳に孔をあけが方がいいかしらって。それを考えていたのよ。かあさん、あけたらいいかしら」
「おまえの好きにおし。孔をあければ、つけられるからね」
「わたし、結婚式のときにつけたいの。でも、10日しかないから、傷がこじれて治らないなんてことになったら」
「耳に孔をあけるときは傷にならないものよ、おまえ。心配性だね」
「きれいにしたいの」
「今でも十分、きれいだよ」

スイッチを消し、床に入ってお祈りをしたが、その間中、閉じた目の中に二つのダイヤがボーボーの顔と入れ替わりに浮かんだ。

「かあさん」
「なあに」
「ほかの人なら、女の子が生まれたらミードウイン(注:子どもが生まれてから7日目までの間のこと)のときに、耳に孔をあけるでしょう。かあさんはなぜ、わたしに孔をあけなかったのかしら」

ケッガレイたちの寝室は真っ暗で、母親の顔は見えなかった。
母親からは長い間返答がなく、ケッガレイは我慢できなくてなって、母親の方へ寄っていった。

「かあさん、もう眠いのね」
「そうじゃないのよ。おまえの耳に孔をあけなかったわけを思い出していたの」



「ボーボーのおとうさんがおかあさんに結婚の贈り物として耳飾りをあげたように、そして、今、ボーボーがおまえにくれたみたいにね、おまえのとうさんも、かあさんに結婚の贈り物といって、耳飾りをくれたことがあるの」
「へー、かあさんにも物語があるのね。とってもロマンチック」

「ロマンチックなんてこと、わたし達には本当に少なかったわ。かあさんはね、両親の勧める工場主の息子とは結婚せず、ただの下級事務員に過ぎなかったおまえのとうさんと駆け落ち、両親から何一つもらわずに出て来たの。耳飾りだって何もなしに、孔だけがポツンとあいていたものだから、とうさんがルビーの耳飾りを買ってくれたのよ。その耳飾りに始まって、何から何まで借金で始めたのよ」

「両親もわたしのことは見捨ててしまったからね。愛する人と離ればなれになる苦しみ(注:仏教思想における八苦の一つ)から逃れた代わりに、わたしは貧しさという罰をずいぶん受けなければならなかったのよ。どれほど貧しかろうと、かあさんはやってこれたわ。でも、つらいことが一つだけあった。やりくりがつかなくて、耳飾りを質入したときには、どれほど惨めな思いをしたかしれない。耳の孔がぽつんとあいていて、外に出るのがとっても恥ずかしかった。とうさんも知っていたわ。だから、落ち込むわけよ。そんな風に二人ともすっきりしないと、すぐケンカしてしまうのね」

それぞれの思いに浸りながら、しばらくの間押し黙っている二人。

「かあさんの耳飾りはいろんな理由で質屋にしょっちゅう入っていたの。おまえのとうさんは地味なひとで、一生懸命仕事をするだけがとりえ、わき道の収入なんて見つけられないんだもの。ぼちぼち昇進して役所の係長にまでなったけど、物価はどんどん上がっていくものだから、かあさんの耳の孔はよくからになっていたの。そうね、おまえの物心がつくまえに、とうさんは死んでしまったでしょう」

ケッガレイの父親は自動車事故で亡くなったと聞いていた。

「その日は役所で決算が合わないために監査が入るといって、お昼に一度走って帰って来た。それで耳飾りを質屋に入れてお金を足してあげたのよ。その翌日はお隣でスンチュエ(注:供養やめでたいことがあった時に、僧侶を招いてご馳走すること。その後、隣近所の人々にも振舞う)があるから、行かないわけにも行かないし、行くにも耳の孔はあいたままでしょ。かあさんもいやな気分だった。耳の孔にタバコの箱についている銀紙を巻いて、差し込んでおいたの。夕方役所がひけて家に帰ってきたとうさんは、かあさんがそんな風に銀紙を巻いてさしているのを、座ってじっと見ていたんだけど、急に、『ミャトウエや、ちょっと出かけてくるよ』といって家を出たのね」

母のもとから、ため息かすすり泣きか、はっきりしない音が聞こえて来た。

「夜になって、近所の人と一緒に病院に行かねばならなかった。友達から借りたお金で耳飾りを受けだして、その帰りに事故にあったわけ。意識もハッキリしていて、『ミャトウエ、心配するなよ。ぼくはなんともないさ』って。それから、上着のポケットから紙で包んである耳飾りを取り出した。そして、血をがぼっと吐きながら、そのまま死んでしまったの」

「あの人が命と引き換えに取り戻してくれた耳飾りは、あの人の供養にパゴダに寄進してしまった。かあさんの耳の孔のせいであの人に不安を与えたことが、あんまり辛くて、それ以来耳飾りは決してしたことがないの。そのうち、孔も消えてなくなってしまったわ」

「耳の孔のために苦労をしょい込むのが心配で、かあさんはわたしに、耳の孔をあけさせなかったのね。わかったわ、かあさん」
「そうよ。この耳の孔のせいで、耳飾りが単なる装飾品を越えて、なしには済まされない必要不可欠なものになっているんだ、そうかあさんには思えるの。耳飾りがないと耳の孔もぽつりとあいておかしいんだもの。でも、おまえはかあさんとは人生の進み方が違うよ。おまえは運がいいもの。ボーボーはお医者さんだしね。かあさんのような貧乏暮らしはしないだろうし、かあさんのようにこの孔のために苦労することもないだろうからね」

ケッガレイの額を心を込めてなでてやりながら、優しくなだめる母。
「おまえの小麦色の肌に、ダイヤの耳飾りはほんとうに映えるだろうね」



ケッガレイたちの結婚式は何一つ派手なことはしなかった。
大げさにとり行うほどのお金もなかったし、そうしたい気もなかった。

ボーボーは就職しばかりの新米の医者だったので貯金はなかったが、初恋のケッガレイをこの手にできるというだけで、計り知れない充足を覚えていた。
ケッガレイも、十代の頃からいつも一緒にいたボーボーだからこそ幸せを感じるのだった。

「ほんとうにきれいだよ、ケッガレイ」と数え切れないほど、何度も言うボーボー。
「わたしの耳飾り、光っているかしら」とケッガレイ。
「でも、耳の孔をあけずに、どうやってつけているんだい」
「あとで言うわ」



客も帰って二人きりに。
好奇心を押さえきれなくなって、ボーボーは訳を尋ねた。

ケッガレイはにっこりと微笑んで、耳飾りに飾っていた耳飾りのねじを回して外して、ボーボーの手にのせた。

「あなたからもらった次の日に、細工屋でイヤリングに直してもらったのよ」
「よく思いついたね。孔をあけないから、肌も痛めずに済むし。だけど、ねじをきつく締めたから、耳タブが真っ赤になって」
ケッガレイはボーボーの懐の中に入り込んで、頭をそっと寄せていた。

「イヤリングというのは本当に単なる装飾なのよ、ボーボー。つけたいときにつける、つけたくないときには外しておいたって、耳の孔はがらんと残ったりしないわ。孔ががらんどうにならなかったら、耳飾りだって、必要不可欠の品物にはならないもの」

突然溢れ出した涙を見せないように、ボーボーの胸の中に顔を埋めるケッガレイ。

「もっと大きくって、もっと高級で、もっと輝くダイヤの耳飾りをつけるため、あなたの学問が歪んでしまうのが恐かったの。わたし達がダイヤを追い求めるようになるのが恐かったのね。あなたが一生背負わなくてはならないような重荷になるのだけはイヤだった、ボーボー」

ケッガレイの言葉の真意はボーボーには分からなかった。
理解しようと努力もしなかった。
ただ、信頼しきって寄り添ってくる愛しい女(ひと)の柔らかな髪の毛先に、慈しみを込めてそっとキスをするばかりだった。

『ケッガレイの耳飾り』ミャフナウンニョー著/「第二医科大学年刊雑誌」1982年初出/堀田桂子訳)


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『少女1』(ヤンゴン)


kokeko's memo: 二人三脚で生き抜いて来た母娘。なぜ、母親は耳の孔をあけてくれなかったのか。結婚式直前に明かされた、母の物語。そして、娘の幸せを心から願う母の想い。それとは対極に、ケッガレイを手にいれた喜びに浸るボーボーの単純さがおかしかった。"どこの国でも男って、そんなもんでしょ"という声が聞こえてきそう(笑)!?





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『少女2』(ヤンゴン)

# by kokeko-13 | 2012-05-15 21:19 | ビルマ文学

一枚のタメイン   

朝。
ミドーは米の入った鍋をどっこらしょと持ち上げて、かまどに据えた。
そして、すすで真っ黒に汚れている蓋を米のとぎ汁でゆすぎ、ふたをする。
夕食用に残した米を古いパソーで包みなおした。

タマリンドの葉の束を取りに行って、床に腰を下ろした瞬間、ビリッと音がして、タメイン(注:女性が身につけるロンジー/スカート)が破れた。

あああ、もうだめだ、やっちゃった。
これはかあさんの遺品のタメイン3枚のうち最後の1枚。
あしたになったら、おばさんの家から針と糸を借りて繕わなくちゃ。

タマリンドの鍋の中に、包みにへばりついているンガピ(注:魚醤。タイのナンプラーみたいなもの)を少しばかりすくって入れた。
油のビンを傾けてみたが、落ちてきたのは一滴、二滴。
夕方とうさんからお金をもらったら、あした買い揃えなきゃ。

「ごはんよー、おいで」
ミドーが叫ぶと、家の前で遊んでいたミドーの3人の妹たちが戻ってきた。
赤っぽい重湯一杯(注:裏作で収穫される安価の粗悪米を食べていることが示されている。これらは炊くと赤っぽくなる)とタマリンドのスープを真ん中にして、もくもくと食べた。
ミドーたちは河もぐりばかり過ぎるものだから、それに油を塗る余裕もないし、髪の毛は赤茶けてしまっていた。



「ほら、ミドー、お金」
父親は肩に担いだ櫓(やぐら)を2本、敷居に立てかけた。
1チャット紙幣が5枚。
「ふーっ。今日は大変だった。水かさが増して濁流が早く流れてきたんだ」

ミドーは父親の言葉ひとつひとつにうなずくだけはうなずいていた。
が、頭の中では5チャットで買い物をする算段を始めていた。

「おいミドーや、何を炊いているんだい」
「アウエヤー(注:レモングラスに似た食用植物)をゆでているの。今日の夕食はアウエヤーのあえ物とタマリンドのスープだよ」

3人の妹たちは跳びっこをして遊んでいた。
ミドーは突然、自分も加わりたくなってきた。
ミドーはずいぶん長いこと遊んでもいない。
母が生きていたときは、村の真ん中まで遊びに行ったものだ。

ミドーはタメインを堅く締め直してから小屋の前に走っていって、妹が跳ぼうとしていた6回目をさっと跳んでしまった。
「あたしの跳び越すこと、見た?」と嬉しそうに叫ぶミドー。
妹は口をとがらす。
「おねえちゃんたら、なにさ。年頃の娘ならそれらしくしてたらどう?娘になったら子どもの中には混じっちゃだめなんだから。向こう行ってよ」
「おや!言うじゃない。なにが年頃さ。あたしは子どもだもん」
「ふーん、おねえちゃんが子どもだっていうんなら、水浴びするときに、どうしてとうさんのお古のロンジー(注:男性が腰に巻くもの)で隠して水を浴びるのさ。あたしたちとおんなじように水浴びしたら?ちがう?」
ミドーは恥入ってしまった。
とうさんのいる方を振り返って窺いながら、恥ずかしさの余り、妹の頭をゴツンと音がするほどこづいてやった。



「川にこれから仕掛けに行こうよ、とうさん」と一番下の妹。
ミドーたちの村ではほとんどの人間が魚捕りの籠を仕掛けるのだった。
タマリンドの枝で作った罠ではたくさんの魚がかかるとは言えないが、それでも2日か3日に1度位上げてみれば一食分は捕れる。

父親が澄んだ水に籠を沈めて、川底に打ち付けてある竹の棒にくくりつけた。
妹たちは、ばしゃばしゃと泳いでいる。
ミドーは細い腕の上になんども落ちてくるシミーズの肩紐を、肩にぎゅっと引っ張り上げながら、昔みたいに転がるように服を脱ぎ捨て水に駆け込みたいという衝動に襲われた。

父親がミドーに声をかけた。
「ほら、ミドー。水浴びをするときには水浴びをおし。何をしているんだい」
「いいんだ、とうさん。今日はもう水浴びをしないの」
父親のはいている水浴び用のロンジーをそっと盗み見ながら小声で答えたミドー。



ひんやりとそよぐ風の感触で、ミドーはハッと目を覚ました。
ミドーの身体には毛布がなく、妹3人の方へ寄っていた。

じき夜が明ける。
ミドーはタメインをそっとたぐりよせ、もう一度目をつむった。
お腹がぐーっという。
お腹がすいたと言っても、今日の朝はもうおかずが何もない。
タマリンドかアウエヤーでも摘みに行かなければならない。
ンガピは少しだけ残っていた。
ただでさえちょっぴりしかないンガピを、今日の分に残しておいたために、昨日の夕食のタマリンドのスープったら、酸っぱいこと。

ミドーは寝床から慌てて跳び起きた。
そうだった、罠を仕掛けて今日で2日になるもの。
ミドーは小屋の下へ降りて行った。

ミドーは川辺へと急ぎ足で歩いた。
川の水面を駆けめぐる曙のさわやかさは例えようがない。
ミドーはタメインを引っ張り上げた。
川辺には誰も来ていない。

タメインを短くはきなおして、水に入って行き、籠を持ち上げてみたが、魚は一匹もかかっていなかった。

がっかりして、籠をもう一度水に沈めたが、うわっ。
ミドーの目が輝いた。

他の人が仕掛けた深みに垂らしてある魚捕りの網が動いているではないか。
大きな魚がつかまったところに違いない。

水の中に慌てて降りて行きながら、網の方へ泳いで行った。
ナマズ、それもちんけな代物ではない。
喜んだなんてものじゃない。
誰の網にしたって、捕らなくちゃ。

捕るのは思ったほど簡単ではなかったが、冷や汗を流しながら、何とかナマズを握った。
川岸に足だけ使って泳いで行った。

身震いするほど喜ぶミドー。
ミドーは陸に、慌てて上がった。

「うわっ、どうしよう」

ミドーは驚きのあまり叫びながら、地面にぺたり座り込んでしまった。
身体からタメインが消えてしまっていたのだ。
水の流れと一緒に流されてしまったのだろう。
魚を外すのに懸命でタメインが脱げ落ちてしまったことにも気づかなかった。
いまや恥ずかしさのあまり身体中が震えた。

もう一巻の終わり。
かあさんが遺してくれた最後の一枚のタメイン。
涙がにじんだ。

家までどうやって帰ったらいいんだろう。
夜も明け始めている。
村の人たちも起きている。
村の真ん中の大通りを、どうやったら抜けて行けるんだろう。

家までどうやって帰ろうかと考えながらも、突如空腹を感じた。
ミドーはナマズをさっと拾い上げた。
奥歯を堅く噛みしめ、目を閉じ、ものすごい勢いで走り出した。
なんて恥ずかしいできごと。
力の限り走りながら、目からは涙がこぼれてきていた。

「あれ!ちょいと、ミドーや」
「おい、あんたったら、いったいどうした・・・」
人々の驚き呆れて叫ぶ声も、ミドーの耳には入らない。
歯をぐっと噛みしめているミドーは、涙をぼろぼろ流しながら、ナマズを堅く握り締め、ただ家を目指して疾走しているのだった。

『一枚のタメイン』ヌヌイー(インワ)著/「ペイブーフルワー」誌1984年3月号初出/堀田桂子訳


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『ロンジーを来た男性』(ヤンゴン)



kokeko's memo:なんと胸が締め付けられるようなストーリーなのだろう。子どもからオトナへと変わっていく、ちょうどはざ間の時期を懐かしく思い出した。自分でもバランスが上手く取れなくて、戸惑ったり、恥ずかしく思ったりしたっけ。母を早くに亡くして、誰よりも早く、子どもを卒業せざるを得なかったミドー。幼いだろうに、家のきりもりをしている姿が目に浮かぶようだ。そして、キーワードは「タメイン」。ミドーがタメインを扱う場面が繰り返し現れる。恥じらいと初々しさ。ところが、母が残してくれた、その最後のタメインも水に流されてしまって。ミドー以上に、私の方がわあわあと、まるで子どものように声に出して泣きたい気持ちになってしまった。

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『色とりどりのタメインに身を包んだ女性たち・寺院にて』(ヤンゴン)

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『使いこまれたチャット紙幣』(ヤンゴン)

# by kokeko-13 | 2012-05-15 19:14 | ビルマ文学

持たざる者の愛   

マツダの4ドア車は、プローム通りを疾走していた。
後部座席に座るノートゥーの胸中は千々に乱れている。
涙をこぼすまい。
先生が運転し、その隣に座っている奥様の膝上から、「月坊や」がノートゥーに向けて笑いかけ、手をさしのべているが、ノートゥーは顔をあらぬ方に背けた。



3年前のあのときも、まさにこの道を、この車で走った。
あのときの車は、今とは逆方向に向かっていたのだが。



アモウの家の階段際で、初めて奥様に会った。
ノートゥーは田舎からラングーンに出て来たばかり。
奥様はモダンで美しい人だった。

奥様はナニーを一人探していた。
2週間後、自分の外国留学が決まっていた為、2ヶ月の息子のことが気懸かりだった。

ノートゥーはその時、23才。
連れ合いは、わが子の誕生を待つ前に死んでしまった。
子どもへの愛を支えに生きていこうとわが身を励まして来たのに、その愛も根づかぬうちに、死神が不当にも愛児をさらって行ってしまった。
息子は生後1ヶ月だった。

奥様は言った。
「あんた、わたしの家で子守の仕事をする?子どもはね、2ヶ月。あんた、実の母親と同じように子どもに気を配って、可愛がってやれる?短気じゃない?我慢強いかしら?」
ノートゥーは、これらすべての問いにこっくりうなずいて答えた。

「月坊や」、奥様の息子の愛称、は2ヶ月児とは思えぬほど、よく太っていた。
肌は綿花のように白く柔らかで、ふくらんだ両頬は柘榴のように赤かった。
死んだ愛児、ソーテエレーが偲ばれた。



奥様は外国に旅立った。
奥様の乗った飛行機が出発すると、ノートゥーは心に奇妙な感慨が訪れた。
ソーテエレーを生んだとき、一人の母になったという自覚や愛や誠意や責任感といった大波が、心に打ち寄せて生じた感慨。
それと同じものが。

帰宅すると、ノートゥーは、月坊やの為に一日に実行すべき計画表を読んだ。
何時に何を食べさせ、何時に何をするか等などを、奥様は表に書き、子どもの枕元の壁に貼っていた。
ああ…、教養に満ち、財豊かなものたちが、一人の子を生み育てることの快調さよ。

子どもをしみじみ見つめるうちに愛情があふれ出し、ノートゥーの胸にゆさぶりをかける。
思わず子どもを抱きしめ、存分に口づけしたい衝動にかられた。
しかし、表の最上段の見出しのところに、黒々と書かれた一文。
"子どもには口づけしないこと"



6ヶ月になった月坊や。
誰もが彼を愛さずにはいられない。
彼に感心を持たずにはいられない。
子どもに何を食べさせたのか、どのように育てたのかと、会う者に必ず聞かれたが、ノートゥーにとってはそれが限りなく誇らしかった。

満1才になった月坊や。
満1才の誕生日にと、奥様は月坊やに小包を送って来た。
中には、さまざまな子ども用品や衣類や玩具が入っていた。

2才になった月坊やは、言葉を話し出した。
月の明るい夜は、ノートゥーは、家の前のベランダで月坊やにおとぎ話を聞かせてやった。
それが習慣づいて、夜ともなればノートゥーがお話をしないと眠らなかった。
寝床から月坊やは、ノートゥーの手をなでたり握ったりし、目をぱちくりさせてお話を聞く。
彼が眠りにおちるまで、ノートゥーは一つまた一つとお話をしてやった。



奥様の帰国で、いつになく家中が活気づいてきた。
ノートゥーは胸をときめかせて月坊やを水浴びさせ、パウダーをはたき、服を着せた。
3才になった健康優良児のかわいいわが子を見たら、奥様はずいぶん驚くことだろう。
「ねえ月坊や。お母様という方が帰ってくるのよ。今からお迎えに行きましょうね。お母様は大きな飛行機に乗ってやってくるの」

飛行機が到着し、奥様がタラップを降りて来た。
月坊やを見つけて、顔を輝かせた奥様。
子どもを抱こうと手をさしのべた。

ところが。
月坊やは奥様に一瞥をくれると、顔をそむけてしまった。
そして、ノートゥーにぎゅっとしがみつくのだった。
奥様の大きなため息。

奥様は持ち帰った玩具や食べ物で息子の気を引こうとする。

1日、2日、3日目になると、月坊やは呼ばれれば、母親のところへ行くようになった。

4日、5日、6日目になると、月坊やのベッドを奥様の部屋に入れた。
その夜、奥様はご自身で、カラー挿絵つきの本を手に、お話をしてやり、月坊やは目をぱちくりさせていた。

ノートゥーは、その夜まんじりともしなかった。
窓際に行って立ったり、部屋の中を歩いたりで落ち着かない。
眠ろうとすると、月坊やの声が聞こえて来る。
ノートゥーは両手で耳をふさぎ、枕に顔をのせてしゃくりあげた。



10日目。
奥様は、ノートゥーに月坊やから離れているように命じられたので、身を隠している。
月坊やが恋しかった。
会いたかった。

ノートゥーはたまたま、奥様と先生がお話している声を聞いてしまった。
「あなた、もう、ナニーはいらないわよ。来年は幼稚園に入るんだし、今から、いくらかは自分でやれるようにならなくっちゃ」
「ノートゥーなしで、君の息子はやっていけるのかね?」
「そりゃ、やれるようにしなきゃ。家にだって、もうちゃんと母親がいることだし。要はね、あなた。あの子が他人にこんなになつくのがいやなのよ。ノートゥーには感謝しているわ。彼女には十分な心づけなりはずんでやって」

足音をしのばせて自室へ駆け込み、前夜同様枕に顔をうずめて泣くノートゥー。

ノートゥーは思い知った。
己が身分を悟った。
それを悟ると、たまらなく胸が痛み出した。
丸9ヶ月を胎内に保ち、10ヶ月目に腹を痛めて生む。
それだけで奥様は月坊やの、押しも押されぬ所有者。
ノートゥーはあの子の所有者ではない。
あの子を愛することは許されない。
そこに、彼女は思い至るべきだった。
はかない未来、再び新しい生活が始まる。



ノートゥーは再び、アモウの家の階段際に戻ってきた。
彼女の人生に有為転変を与える階段際よ。

アモウがノートゥーのそばに来て座り、「泣かないで。あれよりもっと月給の良い家を探してあげるよ」と。
その言葉にきっを顔を上げるノートゥー。
「アモウに分かるのはお金のことだけ。愛のことは全然分かっちゃいない。分かっちゃいない」

(『持たざる者の愛』マ・フニンプエー著「グエーターイー」誌1974年2月号初出/南田みどり訳)
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『ヤンゴン・熱心に祈る女性』


kokeko's memo:切ないストーリーだ。夫と子どもを亡くし、田舎から出て来たばかりのノートゥー。「月坊や」との別れを想像できなかったのか?と言ってしまえばそれまでだが、悲しみの中にいたノートゥーにそれは酷というものだ。私はつい、ノートゥーのことばに思いをめぐらせてしまったが、奥様の姿も痛々しい。当時の外国留学について。解説によると、以下の通りである。「海外渡航が制限されているビルマでは、留学は宝くじにあたったようなものと言われる。外国航路の船員とともに羨望視される立場でもある。外国に行きたい理由の一つには、ハイラックスやパブリカを一台持ち帰り、売却したりバスに改造したりということがある。そうすれば一生、家族とともに余裕のある生活を送ることが出来るからだ。生涯まじめに働いてもサイカー(輪タク)一台買うこともできない、とは巷でよく聞かれる表現の一つ。作者によると、職場の同僚で外国留学した人がいたが、子どものことを考えると羨ましがってばかりいられないと、この小説を書いたとか。
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『ヤンゴン・寺院にいた若い女性』

# by kokeko-13 | 2012-05-08 13:25 | ビルマ文学

太陽と月   

甘く涼やかな歌手ピューティーの歌声が聞こえてくる。
♪夜出る月と 昼出る太陽は どうして会えましょう♪

『しかしながら』、一晩中夜警を勤める若者トウと、日中市場で物売りをする娘キンメーは、"数奇な運命"によって、出遭った。

"数奇な運命"とは…。

二人は同じ日に同じ場所で、盗みに入った。
キンメーはセンダンの葉を、トウは薪用の枯木を盗もうとしていた。
その庭で、二人はバッタリ出遭うのである。

そして、盗みに入った家の犬が、盗人を捕らえるため放たれた瞬間、キンメーはトウに助けられて、逃げることが出来たのであった。

キンメーを助けたことで、英雄気取りのトウ。
二人で逃げる様を思い出して笑うキンメーを見て、あれ!肌は黒くても眉と目はきれいだ、と思う。

「きみたちのところにはセンダンが無いの?」
「少しはあるわよ。でも今みたいに出始めだといい値がつくでしょ。ところで、あんたの所には薪が無いの?」
「いや、あるとも。金さえ出せば、薪どころか、ダイヤのかたまりだって手に入るぜ」

トウはキンメーを見送る。
やせこけた娘だが、一風変わっており、すばしこい。
年の頃は、すぐ下の妹のピョンの奴より少し上だろうか。



そして、今日は彼らの結婚式。
髪ミャウィンに束ねてもらいながら、キンメーは、村はずれの寺院から聞こえて来る木製の打楽器の音に慌てる。
「ほらね、坊様だってお食事がお済みさ。早くしなきゃ」
キンメーに一括するミャウィン。
「今さらじたばたしないのよ、今日は商売に出るなって、あたいが言っただろう」
「あーあ、自分の腹痛は自分にしかわかんないよ。そりゃさ、どこの花嫁が結婚式の当日に商売に出たがるものかい。どうにも仕方がないからさ。間に合うったら。お客は12時に招いてんだもの」

と、玄関でボリューム一杯にあげた拡声器から歌声が聞こえてきた。
♪二本の鎚をはんだづけ ゆるがぬ愛♪

思わず顔をほころばせるキンメー。
「彼はあたしの頼んだことをちゃんとやってくれた、拡声器の手配をしてくれたんだわ」
次に、一体あれの借り賃はいくら位するのかなと連想して、キンメーの笑いは消える。



トウも着替えに部屋に入って来た。
真新しいテトロンの白い長袖シャツを着ると、一段と居心地悪くなるトウ。
「あなた、タイポンは着ないの?」とキンメー。
「おいら、タイポンを作りそびれたんだ。金がひどくかからねえかと心配でさ」
「作りそびれるにしたって、誰かに借りてくるものよ。あなたったら。父さんのだって今着てるきりだしねえ」。
「かまわねえよ。きみがきれいだったら、それでいい」
「あっちへお行き!」
口びるを愛らしくとがらせ、トウの胸をこづくキンメーの振る舞いに、トウの心は再び騒いだ。



「3チャット」
「2チャット」
「宝くじ1枚」

キンメー一家前員が輪になって、祝儀目録を読み上げている。
トウとキンメーが固唾を飲んで、祝儀目録を見つめていた。
「えー、祝儀は計308チャット50ピャーなり」

「ふむ、ということは200チャットばかりの借金か。構わんぞ。父さんが家一軒建てるのを請け負っている。来月の満月日だと、手付けが入るじゃろ。そうすりゃ、いくらか返せるさ」と父。

我が家の屋根を見上げるキンメー。
月も星も丸見えの屋根が、キンメーを見下ろしている。
あーあ、この分じゃ今年も屋根のふきなおしはおあずけね、それだって、今年上ビルマでは雨季が遅れているからいいようなものの…。

「大丈夫ですよ。ボクは昼間暇ですからね。水運びに雇ってもらいますよ」などと、代わる代わる言い合っていると、寺から木製の打楽器の音が聞こえて来た。

「さあ、そのことはもう忘れろ。お前は仕事に行かにゃならんのだから、さっさと行ってこい」と父。



「キンメー、仕事に行ってくる」とトイ。
「うん……」
「朝6時に帰ってくる」
「その時間には、あたしは市場よ」
「おいら、市場へ行くよ。おれたちの大恩人に、牛の骨1チャット分ばかり買ってやらなきゃさ」
キンメーには分からない。

にっこりするトウ。
「あの日、きみとぼくがめぐり遭った庭にいた大きな犬たちに食わしてやるのさ。奴らのおかげでおあれたち二人、縁が結ばれたんじゃないか」
キンメーが顔をあからめにっこりしているので、トウの心は沸き立ってきた。
今日のキンメーの笑顔ときたら、おれをかき乱し過ぎるじゃないか。

「キンメー…」
「え……」
「おれな、きみを思いっきり抱きしめてさ、思いっきり口づけしたいねぇ」
「さあ!」
トウをこづくキンメー。
その手をとらえ、すばやくキンメーの頬に口づけをした。

「じゃ、行ってくらあ」
薄い毛布一枚を肩にのせ、立ち去るトウを見送るキンメー。

『二人の胸のうちは……』

(『太陽と月』チューチューティン著、「グエーターイー」誌1982年12月初出/南田みどり訳)


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『ヤンゴン・物売りの少女』
注:これは、kokekoが2011年に、ミャンマー・ヤンゴンを旅行した時の写真です。

kokeko's memo:バリ島を旅行した際、路上でたまたま待機していたタクシーを利用したら、その運転手さんが一生懸命ガイドもしてくれたので、翌日もお世話になった。その時、運転手さんが「まとめて仕事が入ったので、新しい家の屋根の足しになります。まだ、屋根が付いていなくてね」と話していたのを思い出した。それにしても、このトウとキンメー、二人の若いカップルの姿が初々しくて、清々しかった!犬を大恩人と感謝するトウの純朴さにも惹かれるものがあった。現実は待っているけれど、幸せそうな二人なら力を合わせて乗り越えていくんだろうなって。解説によると、作者は「歌手のピューティーの歌を聴いているうちに、この作品が浮かびました」と書いてある。
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『ヤンゴン・傘の下のカップル』

# by kokeko-13 | 2012-05-08 10:13